『訴訟』 カフカ 以前、『審判』についての記事を書きましたが、今回は、光文社古典新訳文庫より出版されている、丘沢静也 訳の 『訴訟』です。「審判」って、言葉の響きが重いですよね。「審判が下される」みたいに、結論が決まってしまう、運命が定まってしまうような・・・「訴訟」は、原題に忠実なタイトルになっているようで、なるほど、主人公Kに起きた「訴訟」が、どう進行していくのか、その過程、というイ...
『訴訟』 カフカ
今回は、光文社古典新訳文庫より出版されている、
丘沢静也 訳の 『訴訟』です。
「審判」って、言葉の響きが重いですよね。
「審判が下される」みたいに、結論が決まってしまう、
運命が定まってしまうような・・・
「訴訟」は、原題に忠実なタイトルになっているようで、
なるほど、主人公Kに起きた「訴訟」が、どう進行していくのか、その過程、というイメージがわきます。
とはいえ、「恐ろしさ」「不気味さ」は変わりません。
ただ、丘沢静也氏の訳のほうが、日本語が柔らかく、
たとえば、会話文では、「~~しちゃう」とか、「~~しちゃったもんだから」みたいな表現が使われていて、
硬いイメージの登場人物が、ぐっと身近になったような気がします。
それにしても、同じ作品を(今回、訳者が違いますが)2回続けて読むと、さすがに理解が深まりますね。
最初に読んだときには気が付かなかったような点にも気が付けたりして。
主人公Kを漢字に例えると、「哀」のような気がします。
すっごく恥ずかしい思いをして、それをみんなにみられてしまって、「やだな~~失敗しちゃった」って
照れ隠しで笑顔を見せつつも、目には涙がにじんでいて、笑顔もひきつってるみたいな・・・
逮捕されたって言ったって、法律なんて全く存在してなくて、
とにかく、事態がよくなるよう努力してないと(努力っていう言葉が合っているかどうかわかりませんが)
今よりもどんどん悪くなるよ~~って周りからプレッシャーかけられる。
だから、理屈も根拠もないのに、いろんなものにすがってみる、
だけど、目に見える結果が全然得られない。
なんだか蟻地獄のよう・・・・
そして最後の「終わり」の章(主人公Kが処刑される)では、
「『犬みたいだ!』と、Kは言った。恥ずかしさだけが生き残るような気がした。」
という文章で締めくくられています。
犬みたいに処刑されながらも、恥ずかしさだけが生き残る、という思いを抱きながら死んでいくのです。
まさしく「哀」じゃありませんか・・・・
この「恥ずかしさ」って何だろう・・・・
もうちょっといろいろ手をつくして頑張るべきだったという、反省の気持ち?
自分の周りにいる人々、特にビュルストナー嬢に対する恥ずかしさ?卑屈な感情?
いろんなものが混ざり合ってるのかな・・・・
とにかく不気味な恐ろしさにはまってしまう作品です。
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