緑の光線

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2010-03-12 (Fri)  09:08

「忘却の河」

「忘却の河」 福永武彦 著


この本を最初に読んだのは、確か19歳だったと思う。
今回、約24年ぶり?に読み返してみた・・・
19歳の頃、19歳っていったら、いろいろ悩む時期だよね。
私もいろいろ悩みまくってたよ。
大学での人間関係とか、恋愛のこととか、
そして、両親との関係とか・・・・

私の両親は、ごく普通の、子どもが心配な両親だった。
その「心配」が、当時の私には、とっても窮屈で鬱陶しかった。
特に母親はね、私が何をしでかすかわからなくて、恐かったんじゃないかな。
私が何かをしようとすると、必ずとめられた。
私が羽を広げて飛び立とうとすると、いつも足を押さえられてた、そんな感じ。
どうして応援してくれないのか、どうして「頑張ってみなさい」と言ってくれないのか、
その当時はそんなことばかり考えていたかも。
母親は、私が4年制の大学に行きたいと言ったときも、「女の子は短大で充分」と言った人。
それって、4年制大学でほんとうに勉強したいと考えてる女の子に対しても失礼だし、
自分の進路をきちんと考えて短大で学びたいと思っている女の子にも失礼な話だよね。
この言葉を聞いたとき、怒りというか、こりゃ駄目だ、と半ば諦めの境地だった。
「あなたは、なぜ普通の女の子みたいにできないのか?」とも言われた。

私って、そんなに信用できないのか、私は自由にはなれないのか、そういった怒り、
やりきれなさ、寂しさ、みたいなものが、私の中にどんどん溜まっていき、
自分の内側の世界ばかりが広がって行った。
なぜ親は私のことを理解してくれないのか・・・・

そういうときに出会った本です。(前置きが長くてすみません)
この本を読んで、何を感じたかと言うと・・・

親であっても、父親は、父親である前に、ひとりの男性であって、
母親は、母親である前に、ひとりの女性なんだということ。当たり前のことなんだけど。
それまでは、両親は、私にとって「両親」でしかなかった。
だけど、父親には、父親の人生、世界があって、それは私が知ることのできないもの。母親も同じ。
ひとりの「男性」、ひとりの「女性」であることを理解したのです。

もしかしたら、母親には、今でも忘れられない人がいるのかもしれない。心の中にずっと秘めている
人がいるのかもしれない。誰にも言えず、気持ちを押し殺して生きてきたのかもしれない。
もしかしたら、父親には、「ほんとうにやりたかった事」があって、でも、いろいろな事情で、
それを我慢して、人知れない苦労をしてきたのかもしれない。

父も、母も、自分だけの世界を持ってるんだ・・ということを悟ったのです。

家族は、父親、母親、子ども、というつながりで結ばれてるけど、
みんな、それぞれ抱えてるものがある、私と同じように。。。
家族といっても、やっぱり他人同士、一人の人間、どうしても、踏み込めない領域がある。
全てを理解し合える、それはやっぱり無理なこと。

これに気づくことができたら、それまでの苦しみを「仕方のないこと」として、
受け入れられるようになったのです。

あ、肝心の小説の話をしないと・・・
この小説は、とにかく構成が素晴らしいです。
そして、言葉が美しく、何一つ無駄な言葉がなく、ひとつひとつの言葉が
心にしみ込んできます。
記憶のつながり、愛、死、罪、償い・・・

最後の章の、ラスト10ページくらいかな・・泣きながら読んだ。
多分最初に読んだときは、この部分でこんなに泣きはしなかったと思う。
お互いに「わかりあえない」気持ちを抱いていた家族が、月日を経て、
心を通い合わせるんです。少しずつ・・・

福永武彦氏の作品、最初に読んだのは「夢見る少年の昼と夜」が表題作の短編集です。
この本で、福永武彦氏の世界に魅せられてしまいました。
(残念ながら、この短編集、新潮文庫では、絶版のようです)
そして、2冊目が、この「忘却の河」です。
新潮文庫から出版されてる作品は全部読みました。
あとは、大学の図書館で全集を読んだりもしたな~~~

「夢見る少年の昼と夜」ほんとに素敵な小説なんですよ。

あ、ちなみに、福永武彦氏は、小説家池澤夏樹氏の実父です。
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最終更新日 : 2019-06-08

No title * by 龍香
家族ってみんなそれぞれ生きてきた分自分の世界を外にもっていて、培ってきた人間関係もあるけど、でも「ただいま」って帰ってきて、「いただきます」って一緒にご飯食べて、いろんなこと話してお互いのこと喜んで。。改めて考えてみるとなんというなんだか不思議な感じ^^;何があっても一生続いていくものね~、いずれ住む場所はちがったりするけど。
理解しあえない部分はあるけど、でも大切にしようっていう気持ちは強いし自分が大切に思われてる場所だって思える確かな場所かな。。一応^^;

私の両親は子供ほったらかし(本人たち忙しくてね)だったからあまり抑圧された感じはしなかったかな。。グリちゃん、19歳のときにこの作品を読んで「それまでの苦しみはしかたのないこと」って思えることができたの?とっても精神的に自立したしっかりした女性だったのね。

また今読み始めたものが終わったらこの作品も探してみようかな。。

No title * by green
ママさん、うん、家族って不思議かも・・・
他人だけど、決して他人じゃない。不思議なものでつながってるよね。
それに、心底心配してくれるのは、やっぱり親が一番かも・・って思います。私もまた同じように親の事がたまらなく心配。
それって、「愛」だよね~~
私はいつも「ほったらかしにしてくれ~~」と思ってたよ(笑)
苦しみを受け入れた、っていうと、ちょっと大げさだけど、
心にすとんっと落ちたっていうか、「あ、そっか~~」って
納得したというか・・・そのときの感情、今でも覚えてるな~~
とっても綺麗な作品(すごく哀しいけど)よかったら読んでみて♪

No title * by kinaco
こんにちは。本から学ぶことってたくさんありますね。。最近読んでいる本が終わったら ぜひ読んでみようと思いました。自分にとってよい本と出会えることはステキなうらやましいことです。。

No title * by green
kinacoさん、本との出会いはかけがえのないものだよね。その人だけの財産だし・・・世界が広がるもんね~~
子ども達にも、そういう経験、して欲しいなと思っています。

No title * by なっちゃん
偶然私も、自分の身の上話を後日記事にする予定なんだけど、
グリちゃんは文才があるね!凄いや!

私も育った環境から、思春期の頃は悩んでもがいて、自分探しを始めた頃でした。
この記事にもあるけれど、「普通」って何?・・・と思う事が当時私にもあって、
その「普通」の感覚の違いに悩まされた事がありました。

父や母が親の前に一人の男と女であり、自分達の人生がそれ迄にあった事は、
私が適齢期に失恋した際、又、結婚する時に、たまたま親と話す機会があって知りました。
不思議と、それ迄は親という視点で親を厳しく判断していた自分が、
少し緩んだ様な気がします。
そういう観方を知ってから、
人は○○である前に「一個人」だという視点で観れるようになりました。

グリちゃんが19歳の時に読んだ時には今回程泣けなかった部分。
19歳から色んな事を経験して、観えてきたもの、感じ取れるものが増えたって事だね。
こうやってまた再び手にして読んだりするのも違う味わいがあって良いね。

No title * by green
文才に長けたなっちゃんに言われると、めちゃくちゃ恐縮します^^;
思春期の頃は悩むよね・・・
そう、「普通」。。ま、自分があまり「普通」でないことは自覚していましたが、そういう自分をそのまま受け止めて欲しかったのかもしれません。だから、「普通の女の子みたいにしなさい」ってい言われた時は、大きな抵抗感を覚えた(笑)
「なんでわかってくれないんだろう」から「人は解り合えない部分があるんだ」と考え方を変えることが出来た、そういうきっかけになった本なのです。

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家族ってみんなそれぞれ生きてきた分自分の世界を外にもっていて、培ってきた人間関係もあるけど、でも「ただいま」って帰ってきて、「いただきます」って一緒にご飯食べて、いろんなこと話してお互いのこと喜んで。。改めて考えてみるとなんというなんだか不思議な感じ^^;何があっても一生続いていくものね~、いずれ住む場所はちがったりするけど。
理解しあえない部分はあるけど、でも大切にしようっていう気持ちは強いし自分が大切に思われてる場所だって思える確かな場所かな。。一応^^;

私の両親は子供ほったらかし(本人たち忙しくてね)だったからあまり抑圧された感じはしなかったかな。。グリちゃん、19歳のときにこの作品を読んで「それまでの苦しみはしかたのないこと」って思えることができたの?とっても精神的に自立したしっかりした女性だったのね。

また今読み始めたものが終わったらこの作品も探してみようかな。。
2010-03-12-16:52 * 龍香 [ 編集 ]

No title

ママさん、うん、家族って不思議かも・・・
他人だけど、決して他人じゃない。不思議なものでつながってるよね。
それに、心底心配してくれるのは、やっぱり親が一番かも・・って思います。私もまた同じように親の事がたまらなく心配。
それって、「愛」だよね~~
私はいつも「ほったらかしにしてくれ~~」と思ってたよ(笑)
苦しみを受け入れた、っていうと、ちょっと大げさだけど、
心にすとんっと落ちたっていうか、「あ、そっか~~」って
納得したというか・・・そのときの感情、今でも覚えてるな~~
とっても綺麗な作品(すごく哀しいけど)よかったら読んでみて♪
2010-03-12-22:42 * green [ 編集 ]

No title

こんにちは。本から学ぶことってたくさんありますね。。最近読んでいる本が終わったら ぜひ読んでみようと思いました。自分にとってよい本と出会えることはステキなうらやましいことです。。
2010-03-15-14:53 * kinaco [ 編集 ]

No title

kinacoさん、本との出会いはかけがえのないものだよね。その人だけの財産だし・・・世界が広がるもんね~~
子ども達にも、そういう経験、して欲しいなと思っています。
2010-03-16-08:56 * green [ 編集 ]

No title

偶然私も、自分の身の上話を後日記事にする予定なんだけど、
グリちゃんは文才があるね!凄いや!

私も育った環境から、思春期の頃は悩んでもがいて、自分探しを始めた頃でした。
この記事にもあるけれど、「普通」って何?・・・と思う事が当時私にもあって、
その「普通」の感覚の違いに悩まされた事がありました。

父や母が親の前に一人の男と女であり、自分達の人生がそれ迄にあった事は、
私が適齢期に失恋した際、又、結婚する時に、たまたま親と話す機会があって知りました。
不思議と、それ迄は親という視点で親を厳しく判断していた自分が、
少し緩んだ様な気がします。
そういう観方を知ってから、
人は○○である前に「一個人」だという視点で観れるようになりました。

グリちゃんが19歳の時に読んだ時には今回程泣けなかった部分。
19歳から色んな事を経験して、観えてきたもの、感じ取れるものが増えたって事だね。
こうやってまた再び手にして読んだりするのも違う味わいがあって良いね。
2010-03-21-21:30 * なっちゃん [ 編集 ]

No title

文才に長けたなっちゃんに言われると、めちゃくちゃ恐縮します^^;
思春期の頃は悩むよね・・・
そう、「普通」。。ま、自分があまり「普通」でないことは自覚していましたが、そういう自分をそのまま受け止めて欲しかったのかもしれません。だから、「普通の女の子みたいにしなさい」ってい言われた時は、大きな抵抗感を覚えた(笑)
「なんでわかってくれないんだろう」から「人は解り合えない部分があるんだ」と考え方を変えることが出来た、そういうきっかけになった本なのです。
2010-03-22-22:03 * green [ 編集 ]