『栄花物語』『五辨の椿』『大炊介始末』 山本周五郎 著
山本周五郎作品、三冊です。
まずは、『栄花物語』です。
これは、江戸時代の老中、田沼意次の話です。
田沼意次といえば、賄賂、悪徳政治家、という面ばかりが注目されがちですが、この『栄花物語』では、田沼意次を違った視点から描いています。
田沼時代の江戸幕府は、財政的に相当苦しかったようで、意次はそれを何とか立て直そうと、かなり進歩的な政策を打ち出しますが、幕府からの理解を得られず、意次が孤立していく状況がよくわかります。
どうやら、その頃、武士よりも、商人の方がよっぽど自由で金銭的にも潤っていたようです。
本の中にこんな一節がありました。
「侍どもは権威を腰にかけて飢え、商人どもは恐れいり奉って暖衣飽食する」
意次が、幕府も経済的な力をつけなければならない!という強い思いをもっていたことがよくわかります。
その一方で、自身の暮らしは、かなり質素だったようで・・・
着ているものも、擦り切れたりほころびたりしてたようです。
まあ、賄賂はもらってたのかもしれませんが、(無理に贈ろうとするものもいたでしょうし)
今の政治家が賄賂をもらうのとは、ちょっと意味合いが違うような・・・
『五辨の椿』は、あるひとりの不幸な女性の復讐劇です(笑)
読みながら、「これって、ドラマや映画になりそうなストーリーだな~~」と思ったのですが、どうやら、何度もドラマ化されているそうです。
まるでドラマ化することを意識して作られたかのような小説です。
『大炊介始末』は、短編集です。
すべて、下町の市井の人びとの生きることの哀しさ、おかしさ、などなどを描いており、
何度も「ほろり」とさせられます。
家族を想う気持ち、自分の仕事に誇りを持つ気持ち、男女の気持ち、行き違い・・・
折をみてまた読み返したい、と思えた本でした。
時代小説ばかりが続いたので、久しぶりに他の作家の本も読みたくなってきました(笑)
スポンサーサイト
最終更新日 : 2019-09-03
Re: ゆっくりと * by green
しっかり読みたい・・・私も同じ気持ちです。
一度読んだだけでは気づけていないことや、読み取れていないことがあったのではないかという気持ちです。
これからも読むことで自分を軌道修正できそうな気がします。
一度読んだだけでは気づけていないことや、読み取れていないことがあったのではないかという気持ちです。
これからも読むことで自分を軌道修正できそうな気がします。
とても心に残る作品なので、集中して、しっかり読みたいと思っています。
読んでいると、自分の居住まいを正したくなりますね。