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2019-11-29 (Fri)  12:55

『破戒』 島崎藤村

いわゆる名作、傑作と呼ばれる文学作品、数多くあるわけですが、人生すっかり折り返し地点を過ぎた今、ひとつでも多く読んでおきたいな~~と最近思うようになりました。中学、高校の教科書に出てくるような文学作品でありながら、タイトルは知っていても、一度も読んだことがない、という作品がまだまだたくさんあるのです。

島崎藤村の『破戒』も、その中のひとつです。
私は、『破戒』を『破壊』と勘違いしていたくらいです💦
破戒・・・戒めを破る、ということですね。
その戒めとは、父からの戒めー自分の身分を決して打ち明けるな、どんなことがあっても一生隠し通せ-という戒めであり、その厳しい戒めを、この作品の主人公丑松がとうとう破ってしまい、自分の出生を告白するまでを描いたのが、『破戒』です。
P1013168.jpg
私にとってかなり衝撃的な作品でした。読み終わった後も、丑松の苦しみや彼がとった行動の訳などについて、頭の中でもんもんと思いめぐらせています。

被差別地域出身であることで、どんな差別を受けてきたのか、というよりも、自分の出生、身分をひた隠しにしてきたことに対する丑松の苦悶が主に描かれています。

外からの直接的な攻撃に苦しむというよりは、丑松が自分の内側で苦しみをどんどん募らせて膨らんでいく様子が書かれています。

同じ被差別地域出身でありながら、自分の身分を明かし、解放運動家として活動している猪子先生を慕い、尊敬し、この先生になら打ち明けられる、先生に打ち明けて、先生の力になりたい、苦しみを分かち合いたい、と思いながらも、いざとなるとどうしても打ち明けられない・・・
目に見えない大きな壁のようなものに阻まれて出口が見つからず一人内へ内へとひきこもっていくような、そんなイメージを私は抱きました。

いよいよ、自分の身分を打ち明けるという決意を胸に、小学校で最後の授業を行う場面は、涙なしには読めませんでした。子どもたちの前で「許してください」と跪いたのはなぜ?なぜ「許してください」なのか? 彼は何に対し、なぜ許しを請わなくてはならなかったのか・・・・

そして、丑松は「逃げるようにして」そこを去り、日本を離れることにします。
もうそこでは暮らせないのです。それだけ、容易には崩れることのない、なくなることはない、根の深さのようなものを感じました。

別れの場に駆けつけてくれた生徒たち、身分など関係なしに丑松自身を見てくれた志保、身分が分かった後でも友達でいてくれた銀之助の存在が救いでした。

この作品、明治時代に書かれた作品ですが、とても読みやすかったです。(そんなふうに読むのか!という漢字はたくさん出てきますが)とても明瞭な文体で、体言止めがたくさん用いられているのが特徴でした。

本の巻末には、この作品の解説、差別問題についての解説があり、この作品の理解に大いに役立ちました。この作品を通して、日本の負の歴史をひとつ知ることができたような気がします。



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最終更新日 : 2019-11-29

被差別 * by おんだなみ
学生時代に教科書の課題にあった作品は
一度、読み返したいと思っています。
この「破戒」は記憶にありませんが、一度、読んで見たいと思います。

日本に限らず、世界には差別が蔓延しています。
差別する側とされる側、差別は何故起きるのか、
自分なりに、更に調べたり・考えたいですね。

Re: 被差別 * by green
『破戒』にあるような差別は、今の社会では薄れているのかもしれませんが、現在でも多様な差別は存在しますよね。
何が差別を生むんでしょうかね・・・なぜなくならないのでしょうか・・・
考えさせられますね。

No Subject * by greengreen
あらすじは知っているのですがまだ読んだことがありません。何であっても周囲に「隠し事」をして生きるのってすごく精神的に辛いことではないかと思うんです。丑松がなぜ周囲に許しを請わなければいけなかったのか?これ、本当に時代の背景ですよね。今の時代、同和問題は表面的には薄れてしまってあまり気にする人はいなくなっているように思うのですが、それでも根絶することは難しいですね。差別の根底にあるのは差別する側の無知と恐怖心であるように思います。差別をなくす・・これは自分自身との闘いでもあるのでは、と。私もこの小説をきちんと読んでみたいです。

greengreenさん。 * by green
主人公丑松の心の辛さがひしひしと伝わり、胸が痛みました。隠しているのも辛いし、かと言って、打ち明けた後普通の人のようには生きられないことは重々わかっているわけですから・・・
根の深い問題だということが改めてわかりました。再読したいです。

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被差別

学生時代に教科書の課題にあった作品は
一度、読み返したいと思っています。
この「破戒」は記憶にありませんが、一度、読んで見たいと思います。

日本に限らず、世界には差別が蔓延しています。
差別する側とされる側、差別は何故起きるのか、
自分なりに、更に調べたり・考えたいですね。
2019-11-30-08:16 * おんだなみ [ 編集 ]

Re: 被差別

『破戒』にあるような差別は、今の社会では薄れているのかもしれませんが、現在でも多様な差別は存在しますよね。
何が差別を生むんでしょうかね・・・なぜなくならないのでしょうか・・・
考えさせられますね。
2019-11-30-21:09 * green [ 編集 ]

No Subject

あらすじは知っているのですがまだ読んだことがありません。何であっても周囲に「隠し事」をして生きるのってすごく精神的に辛いことではないかと思うんです。丑松がなぜ周囲に許しを請わなければいけなかったのか?これ、本当に時代の背景ですよね。今の時代、同和問題は表面的には薄れてしまってあまり気にする人はいなくなっているように思うのですが、それでも根絶することは難しいですね。差別の根底にあるのは差別する側の無知と恐怖心であるように思います。差別をなくす・・これは自分自身との闘いでもあるのでは、と。私もこの小説をきちんと読んでみたいです。
2019-12-05-16:42 * greengreen [ 編集 ]

greengreenさん。

主人公丑松の心の辛さがひしひしと伝わり、胸が痛みました。隠しているのも辛いし、かと言って、打ち明けた後普通の人のようには生きられないことは重々わかっているわけですから・・・
根の深い問題だということが改めてわかりました。再読したいです。
2019-12-06-21:06 * green [ 編集 ]