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2020-07-15 (Wed)  10:40

山本有三集 『波』『真実一路』

引き続き、私の本棚読み返しシリーズです(勝手にシリーズ化してます)。
山本有三集です。これもかなり古い本です(昭和37年の印刷です)。
私が実家を出るとき、父の本棚から勝手に持ち出したものです。
『波』『真実一路』の二つの小説が納められています。
P7090021.jpg
前に読んだときは、『波』よりも『真実一路』のほうが強い印象が残った記憶があります。
ですが、今回は『波』により感銘を受けました。

『波』も『真実一路』も親と子どもがテーマになっているように思います。

『波』は・・・
ひとりの男性が子どもを持つのですが、その子が果たして自分の子なのか、別の男の子なのか苦悩します。今だったら、DNA検査ですぐにわかりそうなものですが、昔はそんな技術もなく、自分の子がどうかわからない子を引き受けて、ひとりで育てていくのです。
いろいろと悩み苦しむのですが、最後は、自分の子かどうかは重要ではない、子どもというのは、社会の子どもなのだ、という気づきに至ります。
この主人公は小学校の先生です。ある日、遊戯の時間に子どもたちにメデシン・ボール(ボール渡し)をさせて遊ばせます。それを眺めながら気づくのです。
子どもなんて、やっぱり、このボールみたいなものなのではないだろうか。・・ボールが自分の手に渡ったら、大事に持って、次の人に渡してやるべきだ。・・まっさきに親のあたまにくるのは「おれの子が」という考えだ。・・ボールが自分のところにまわってきたら、両手でしっかりつかまえて、落とさないように、次の人に渡してやれば、それでいいのだ。‥ボールそのものに、さまざまのものをつけて残してやるなどは、愚の骨頂だ。それはちょうどボールに、どろをなすりつけて渡してやるようなものだ。これがわかれば、今日のやかましい社会問題なども、おのずから解けるのではないだろうか。

何か所も目頭が熱くなる箇所がありましたが、この主人公が、この気づきのあと、自分の子どもと散歩に出かけふたり並んでおしっこをするシーンがあります。仲良くふたり並んでおしっこの飛ばし競争をやっている姿を思いうかべながら、それまでの彼の苦悩がすぅっと溶けていくようで泣きそうになりました。

『真実一路』もすごくよかったです。かなりドラマチックな展開で、どうなるんだろう、どうなるんだろう、という思いで読み進めました。そしていろいろと考えさせられました。
母親になれなかった一人の女性が出てきます。遺書にこう書き残します。
女がおやになるのはなんでもないことです。そんなことはどんな女にだってできることです 
でも母おやであることは なかなかできることではありません
確かにな・・母親であることの難しさは、今も昔も変わらないのでは、と昨今の事件から思ってしまいます。

真実の生き方をしようとして、幸せになれなかった人、自分の人生が誤りだったと後悔してしまう人、いろんな生き方の人がでてきます。真実一路というタイトルが意味すること、いろいろありすぎて、奥が深いです。

再読ですが、いい本に巡り合えてよかったです。またいつか読み返したいと思える作品でした。
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最終更新日 : 2020-07-15

No Subject * by いとこいさん
子どもというものは 社会の子どもなのだ
・・・・その通りだと思いました。未来の社会のための 大事な預かりものですよね。

母親であることの難しさ・・・おっしゃる通り 子供は母親を選べない 最近は大切な子供の命が粗末に扱われていることに腹立たしさを感じます。せっかくこの世界に出てきたのに残念です。
いい記事を読ませていただきました。

Re: No Subject * by green
いとこいさん、本に書かれていることは、当たり前と言えば当たり前のことなのですが、
ついつい忘れがちになることを読書で気づかされます。
小さな子どもの命が粗末に扱われる事件が増えていますよね。
本当に心が痛みます。

感謝 * by おんだなみ
子供が居ないので、気持ちは分かりませんが、
初めから親に成るのではなく育てている内に、
自身も育っていく感じなんでしょうね。
今更ながら、育ててくれた両親に感謝です。

Re: 感謝 * by green
おんだなみさん、こどもを育てるのは社会の重要な仕事なのだと改めて思いました。
教師を目指している方々には、是非読んで欲しい本です。

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No Subject

子どもというものは 社会の子どもなのだ
・・・・その通りだと思いました。未来の社会のための 大事な預かりものですよね。

母親であることの難しさ・・・おっしゃる通り 子供は母親を選べない 最近は大切な子供の命が粗末に扱われていることに腹立たしさを感じます。せっかくこの世界に出てきたのに残念です。
いい記事を読ませていただきました。
2020-07-15-13:43 * いとこいさん [ 編集 ]

Re: No Subject

いとこいさん、本に書かれていることは、当たり前と言えば当たり前のことなのですが、
ついつい忘れがちになることを読書で気づかされます。
小さな子どもの命が粗末に扱われる事件が増えていますよね。
本当に心が痛みます。
2020-07-16-10:38 * green [ 編集 ]

感謝

子供が居ないので、気持ちは分かりませんが、
初めから親に成るのではなく育てている内に、
自身も育っていく感じなんでしょうね。
今更ながら、育ててくれた両親に感謝です。
2020-07-18-06:16 * おんだなみ [ 編集 ]

Re: 感謝

おんだなみさん、こどもを育てるのは社会の重要な仕事なのだと改めて思いました。
教師を目指している方々には、是非読んで欲しい本です。
2020-07-19-06:58 * green [ 編集 ]