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2020-09-30 (Wed)  09:51

『生きとし生きるもの』 山本有三

『生きとし生けるもの』大正15年に新聞に連載された小説ですが未完で終わっています。山本有三が風邪をこじらせてしまったのが原因だとか。未完であるため、登場人物のその後の人生がとても気になります。
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山本有三の小説を読んでいると、テレビドラマを見ているような気分になります。登場人物の個性、登場人物が置かれている状況、あらがうことのできない現実、いろいろな要素が読者を小説の世界へと引っ張り込み、その展開にドキドキハラハラさせられます。

この小説には、対照的なふたりの男性が登場します。
ひとりは実業家の父を持ち、その父から、「このお金で好きなことをやってごらん」と独立資金を与えられます。
一方の男性は、弟の学費を工面しながら、日々の生活を送るのがやっとの毎日を送っています。

ちょっとネタバレになるのですが・・・
後者の男性、少ない月給をやりくりしながら、かつかつの生活をしています。
やっと賞与をもらえることとなりました。そんなにたくさんもらえるとは期待していませんでしたが、賞与をもらったら、滞納している家賃を払って、靴下やシャツを買って、弟の学費を払って・・と賞与の使い道をあれこれ考えていました。そして、いざ賞与をもらい、その封筒の中身を確かめてみると、予想していた額よりもはるかに大金が入っているのです。大きなお札が一枚余計に入っていたのです。彼は、「きっと経理部の手違いだ、すぐに返さなければ」と思い、返しに行くのですが、経理部にはもう誰もいません。「明日返すことにしよう」と思い、その封筒を胸ポケットにしまいます。その帰り道、「賞与をもらったんだからたまには外で食べて帰ろう」と食堂に入るのですが、ま、いろいろあって、その大きなお金を崩さなくてはならなくなったんですね。一度崩してしまうと「タガが外れる」と言うんでしょうか・・ついつい使ってしまうんです。今までいろんなことを我慢してきたわけですから。そして経理部は気が付いてないみたいだ、このまま黙っていれば気づかれないかもしれない、と考えるようになるんです。(天使と悪魔が闘います)
結局経理部に返せないほど使ってしまい、もう後には引けなくなってしまいました。
さて会社に行ってみると、経理部のひとりの女子社員が上司に叱られています。賞与を封筒に入れるときに間違ったのではないかと責められているのです。可哀想にその女子社員は自分の過ちでもないのに、自分の給料から毎月少しずつ、その合わなかった賞与の額を引かれることになってしまいました。彼はどうすることもできません。「実は私が・・」と正直に言いたいところですが、実際返せるお金はありません。黙っているより他にはないのです。
ところが、この二人の距離が近づいていくんですね。彼は彼女への罪悪感もあって彼女と結婚しようとするのです。
そんな中、なんと弟が退学処分となってしまうんです。「もう学校には行かない」と言い出す弟・・
弟を学校に行かせるためにあくせくしてきたというのに!

と、ここで小説はおしまいになります。(ちょっとどころかかなりのネタバレですみません💦)
彼と経理部の女子社員のふたりは、これからどうなるんでしょう。結婚した後も彼は自分の罪を打ち明けないままにするのでしょうか?そんな大きな秘密を抱えたまま幸せになれるのでしょうか。
弟の将来も心配、そして彼と弟との関係もどうなるか心配、兄弟ふたりだけの家族なのに・・・

未完であるがゆえに、読者にいろいろなことを考えさせます。

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最終更新日 : 2020-09-30

適度にガス抜き * by おんだなみ
真面目すぎたりすると「タガが外れる」ってあるんでしょうか、
返すに返せない位使ってしまうって、ガマンし過ぎも
良くないのかも、と思ってしまいます。
未完だからこそ、その後を想像させてくれますね。

続きが気になる * by はなまめ
確かに”その後”がすっごく気になる展開ですね。
う~ん、結局は嘘はつき続けられない(バレる)気がしますが、その時登場人物たちはどうするのか・・・。
色々な人が続きを書いて、マルチエンディングにしたら面白いかも。

Re: 適度にガス抜き * by green
おんだなみさん、彼は我慢しすぎたというよりも、我慢せざるを得ない生活状況に置かれていたんですよね。
経理部に返しに行ったときに、もし経理部にまだ人が残っていれば・・・彼の人生は変わっていたかもしれません。
人生はままならないな~~と思います。

Re: 続きが気になる * by green
はなまめさん、気になりますよね・・
もし何らかの形でばれてしまったら、彼女はどうするんでしょうか。
許すにしても許さないにしても、関係は変わってしまいますよね。
確かに、いろいろな人が書いた続き、読んで比べてみたいですね。

No Subject * by いとこいさん
なかなか思うようにいかないのが人生
自分一人のことではありませんから
人もそれぞれ 周りの取り巻く環境によって意思、考え方も変わるのが当たり前ですもんね・・
人生そのものですね

ゴンへのおやさしいおことば お悔やみのお言葉ありがとうございました。
うれしかったです。

Re: No Subject * by green
いとこいさん、本当に人生はままならないですね。
最近それをよく感じます。
状況に流されず自分自身を保つことはなかなか難しいです・・・

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適度にガス抜き

真面目すぎたりすると「タガが外れる」ってあるんでしょうか、
返すに返せない位使ってしまうって、ガマンし過ぎも
良くないのかも、と思ってしまいます。
未完だからこそ、その後を想像させてくれますね。
2020-09-30-17:23 * おんだなみ [ 編集 ]

続きが気になる

確かに”その後”がすっごく気になる展開ですね。
う~ん、結局は嘘はつき続けられない(バレる)気がしますが、その時登場人物たちはどうするのか・・・。
色々な人が続きを書いて、マルチエンディングにしたら面白いかも。
2020-10-01-13:18 * はなまめ [ 編集 ]

Re: 適度にガス抜き

おんだなみさん、彼は我慢しすぎたというよりも、我慢せざるを得ない生活状況に置かれていたんですよね。
経理部に返しに行ったときに、もし経理部にまだ人が残っていれば・・・彼の人生は変わっていたかもしれません。
人生はままならないな~~と思います。
2020-10-01-20:16 * green [ 編集 ]

Re: 続きが気になる

はなまめさん、気になりますよね・・
もし何らかの形でばれてしまったら、彼女はどうするんでしょうか。
許すにしても許さないにしても、関係は変わってしまいますよね。
確かに、いろいろな人が書いた続き、読んで比べてみたいですね。
2020-10-01-20:18 * green [ 編集 ]

No Subject

なかなか思うようにいかないのが人生
自分一人のことではありませんから
人もそれぞれ 周りの取り巻く環境によって意思、考え方も変わるのが当たり前ですもんね・・
人生そのものですね

ゴンへのおやさしいおことば お悔やみのお言葉ありがとうございました。
うれしかったです。
2020-10-04-17:36 * いとこいさん [ 編集 ]

Re: No Subject

いとこいさん、本当に人生はままならないですね。
最近それをよく感じます。
状況に流されず自分自身を保つことはなかなか難しいです・・・
2020-10-05-20:35 * green [ 編集 ]